就活生であれば、「ガクチカ」という言葉はご存じかと思います。
今や当たり前のように使われているこの言葉は、採用面接で聞かれる定番の質問となっています。ガクチカとは、「学生時代に力を入れたこと」を略した言葉で、採用面接はもちろん、エントリーシートにも記載が必要な会社が多いようです。
「学業に力を入れました」は、企業側からするとインパクトに欠けてしまいます。
逆に体育会系の学生の「スポーツに対する取り組み」の評価は高く、体育会系の学生は企業側からすると魅力的に見えるようです。
少し古いデータとなりますが、一般学生よりも体育会系の学生の方が6月時点での内定が出る割合が高くなっています。
体育会学生の就職活動調査
同じような環境にいるのに「就活で不利になる」と思ってしまっているのが音大生です。
音大生は音楽で生きていくために大学に進学しているため、就活を始めようとすると、「なぜ、一般企業に就活するのか?」と周りに言われてしまうことがあるそうです。
また、音楽に一生懸命に打ち込んできたため、当の本人たちも「私は音楽以外のことを知らない」という意識が働いてしまい、一般企業で働けないと思ってしまうようです。
就職活動で音大生が不利だと思う理由
しかし実際には、企業側から見た音大生のポテンシャルは、体育会系の学生と同じくらい多くの魅力があります。今回は、音大生の魅力を改めてご紹介していきたいと思います。
経済的に裕福な家庭で「育ちが良い」場合が多い
googleの元役員が欲しい人材として「good natured person」と言っているように、組織において「良い人」であることはとても重要です。
両親が経済的に裕福である場合、相対的に教育の質が高くなる傾向があります。
つまり音楽大学(特に私立音大)に通えるほど裕福である場合、高い水準の教育を受けたり、蔵書数や玩具の数が増えたり、習い事の数が増えるため、「経験」という部分でも差が出てきます。
両親が裕福だからと一概に言えることではありませんが、環境という大きなアドバンテージを持っている音大生は、育ちが良く、良い人である場合が多いと考えられます。
音楽という競合の多いジャンルで「音大」に入学できるほど、頑張れる人材
音大に入るためには熾烈な競争を勝ち抜く必要があります。
また、小さい頃から音楽の練習に膨大な時間を使い、才能のうえに、地道な研鑽を重ねなければ、音大には入学することはできません。
音楽に特化した話ではありますが、それはスポーツでも同様です。
音楽も一人で演奏するものもあれば、チームを作って合奏をするものもあります。
一つの目標に向かって、全員で頑張る経験をしてきた音大生は、企業のプロジェクトを成功させるためにはとても貴重な戦力となり得ます。
コンクールに向けて、自分の能力をコミットする力
誰しもが音楽コンクールで入賞ができる訳ではありませんが、その舞台に立つこと自体が困難な中で、日々研鑽をしながら、自分の能力値を限界まで伸ばし、結果にコミットしていきます。
ビジネスでも、納期を守る責任感、提出物の品質を担保する段取り能力が求められる中で、音大生以上にそこにシビアに向き合っている学生は多くはないでしょう。
「自分の課題を見つける客観性」と「他者の意見を受け入れる素直さ」
音大生の毎日は、自分の演奏の課題を見つけることと、それを解決し、レベルアップすることに特化しています。毎日、自分自身を見つめ直し、改善を繰り返す作業をひたすらに行うのです。
多くの人はここまでストイックに日々を過ごせるでしょうか?
音大生は、こういった作業を繰り返す中で、人間性にも磨きをかけていきます。
一緒に演奏をする仲間たち、演奏を指導してくれる大人たちとのコミュニケーション、そして、周りにいる人たちからの意見を受け入れながら、自分自身を成長させています。
このように、音大生は「音楽」に特化しているからこそ、多くの能力を手に入れており、それが企業にとっては大きな魅力になります。ただ、音楽に特化していたからこそ、自分のポテンシャルと企業の求めることをマッチングさせることが苦手になってしまっています。
相手(企業)がどんなことに悩んで、どんな人材を求めているかを理解することで、音大生がアピールできることは本当にたくさんあります。
例えば、企業では、働き方改革に代表されるように、社員の働く環境の改善を必死に行なっています。
ランチタイムに社食で音大生の奏でる音楽が聴けたらそれは素晴らしい福利厚生になります。その他にも、会社の吹奏楽部を立ち上げる場合、音大生が指導をするということも可能です。
「音楽」という武器はもちろん、本人の能力という点でも、ビジネスの大きな推進力になることでしょう。これからの時代は、入社してから手に入れる能力だけではなく、20年以上積み上げた学生一人ひとりの経験値を価値に変えていく時代です。
学業を本気で頑張った学生、アルバイトで死ぬほど働いた学生、オンラインゲームに学業以外の全ての時間を使った学生。どの学生もその経験を価値に変えることができます。
あとは、学生自身が社会を知り、会社を知り、目の前の人が何を求めているかを知れば、自分自身の社会での活かし方に気づけるはずです。
そして、企業側も硬い頭を柔らかくして、若い人たちが持っている能力や情熱を価値に変えていく努力をしていく必要があります。
時代を担う若者たちを一括りの判断基準で採用するのではなく、自分たちも大きな変化の中で何かを見つけて行かなければいけないことを改めて考えていただければと思います。