テレワーク(リモートワーク)は就活生にとって企業選びの判断軸の一つになっている。しかし、新入社員にとってテレワーク環境には特有のデメリットがあることを、就活中に把握できている学生は少ない。
この記事では、日本企業のテレワーク普及の現状を確認しつつ、新卒が直面しやすい5つのデメリットを複数の調査データをもとに解説する。企業選びの際に何を確認すべきかも具体的に示す。
この記事でわかること
- 日本企業のテレワーク実施率と新入社員の実態(2024年データ)
- 新卒に特有のテレワークのデメリット5つ
- 若手社員がリモート環境で感じたリアルな声
- テレワーク導入企業を選ぶときに企業へ聞くべき質問
- 「テレワークか出社か」ではなく柔軟性で企業を見る視点
日本企業のテレワーク普及率と新卒採用の現実
テレワークは全社員に一律に適用されているわけではなく、新入社員については出社中心とする企業が依然として大多数だ。
パーソル総合研究所の調査によると、2024年7月時点の正社員のテレワーク実施率は22.6%で、前年同時期(22.2%)からわずかに増加し横ばい傾向にある。従業員1万人以上の大企業では38.2%に達する一方、中小企業では実施率が低い傾向がある(パーソル総合研究所・テレワーク調査)。
年齢層別に見ると格差が大きい。リクルートワークス研究所の分析では、20代社員のテレワーク実施率は2020年5月の34.3%から2022年7月には12.0%へと約3分の1に減少しており、全世代平均を上回る速度で出社回帰が進んだ(リクルートワークス研究所)。

参照:株式会社学情「新入社員の勤務形態に関しての調査」(調査期間:2024年2月22日~2024年3月1日)
学情が企業の人事担当者を対象に行った調査(2024年)では、2024年4月入社の新入社員について約9割の企業が「原則出社勤務」と回答。テレワークと出社を組み合わせるハイブリッド勤務は8.9%、「入社直後から完全テレワーク」はわずか0.2%だった(PR TIMES・学情プレスリリース)。
企業からは「入社1年間は原則毎日出社としている」「気軽に質問できる環境をまず作りたい」「2023年度から新人研修をリアルに戻したところ入社1年目の離職が減った」といった声が寄せられている。
つまり「テレワーク制度あり」と求人票に書かれていても、新人には当初から適用されないケースが多い。制度の有無だけでなく、新人への適用条件を確認することが重要だ。
テレワークのメリットと就活生の期待値
テレワークへの関心は高く、就活生がその導入状況を確認するのは自然なことだ。デメリットを検討する前に、メリットも整理しておく。
厚生労働省「労働経済白書」(2020年)によると、テレワーク経験者が感じたメリットの上位は以下の通りだ(厚生労働省)。
| メリット項目 | 回答割合 |
|---|---|
| 通勤時間を節約できる | 89.1% |
| 通勤による心身の負担が少ない | 82.4% |
| 隙間時間を有効活用できる | 60.1% |
| 業務に集中できる | 55.2% |
| 家事の時間が増える | 43.5% |
| 仕事の生産性・効率性が向上する | 36.4% |
通勤ストレスの削減や時間の有効活用は実感しやすいメリットだ。テレワーク実施者の87.2%が「今後も継続希望」と答えており、関心の高さは数字にも表れている。
ただし、就活生が企業選びで重視するポイント全体で見ると、テレワーク制度は必ずしも最優先ではない。東京商工会議所の新入社員意識調査(2024年)では、「柔軟な働き方(テレワーク・フレックス等)」を重視すると答えた新入社員は約4%にとどまり、「初任給・待遇」「社風」「福利厚生」より下位だった(東京商工会議所)。「あれば嬉しいが絶対条件ではない」という位置付けが実態に近い。
新卒に特有のテレワーク5つのデメリット
ここからが本題だ。テレワークのデメリットは社会人全般に共通するものもあるが、職場経験のない新入社員にはより深刻に影響する課題がある。
デメリット① 孤独感とコミュニケーション不足
テレワークで最も多く報告される課題が、対面コミュニケーションの減少による孤独感と情報断絶だ。
週4日以上リモートワークを行う20代の一人暮らし社員を対象にした調査では、67.9%が「リモート生活で孤独感を感じたことがある」と回答。「しょっちゅう感じる」23.6%、「たまに感じる」44.3%と、約7割が何らかの孤独を経験していた。孤独を感じる理由は「人と話す機会が少ない」「テキストのみの表面的なやりとりが多い」が上位を占めた。
厚労省の調査では、テレワークのデメリットとして「同僚や部下とのコミュニケーションがとりにくい」(56.0%)「上司とのコミュニケーションがとりにくい」(54.4%)がトップ2だった(厚生労働省)。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の企業調査(2020年)でも、リモートワーク活用上の課題1位は「従業員同士のコミュニケーションが希薄になっている」(37.8%)。「部下の仕事の進捗管理が難しい」(34.9%)、「人事・業績評価が難しい」(23.0%)、「部下の教育・指導がしづらい」(20.7%)と続く(JILPT)。

参照:株式会社学情「新入社員の勤務形態に関しての調査」(調査期間:2024年2月22日~2024年3月1日)
企業人事担当者への別調査では、若手社員がテレワークする際の課題として「モチベーションなど部下の状態がつかみにくい」(82.2%)、「報連相などコミュニケーション不足」(72.6%)、「作業の進捗状況や成果の把握が難しい」(68.5%)が上位を占めた。リモート下では上司が若手の様子を把握しにくい実態が浮かびあがる。
日本能率協会マネジメントセンターが2022〜2023年入社の新入社員を対象に行った調査では、在宅勤務が多かった新人の15.5%が「上司・先輩との関係構築」に課題を感じると回答。出社主体の新人には見られない高い割合だった(PR TIMES・日本能率協会マネジメントセンタープレスリリース)。
デメリット② 評価の不透明さ
テレワーク環境では、自分の働きぶりが正しく評価されているか分かりにくいという問題が生じる。
JILPTの企業調査では23.0%が「従業員の人事・業績評価が難しい」をリモートワークの課題に挙げた。オフィスなら上司が自然に気付く「早朝の自主学習」「残業して頑張っている姿」も、リモートでは勤怠記録上でしか把握できない。
新人の立場では、上司との接点が減ることでフィードバックの機会も少なくなる。チャットやメールの指摘は相手の表情や声色が伝わらないため、叱咤激励のつもりのコメントも「怒られてばかり」と感じてしまうケースがある。
テレワーク環境では成果主義が強まりやすい。成果を出せる状態になっていない新人ほど評価の場に立てない可能性がある。学情の調査でも「作業の進捗状況や成果の把握が難しい」(68.5%)が若手テレワークの課題上位に挙がっており、適切な目標管理と評価フィードバックがしづらい構造が浮かび上がる。
企業に確認すべきポイント:「テレワーク時の新人育成・評価はどのように行っていますか?」週1回の進捗面談やOKR・目標管理ツールの活用など具体的な仕組みがあるかどうかを聞いてみよう。
デメリット③ 自己管理の難しさ
オフィスという「働く空間」を離れた在宅勤務では、仕事の時間・タスク・生活リズムを自分で管理する力が求められる。職場経験のない新人にはハードルが高い。
厚労省調査では、テレワークのデメリットとして「家族がいるときに集中しづらい」(27.6%)「OA機器が整っていない」(38.6%)といった在宅環境での集中阻害要因も挙がっている(厚生労働省)。
新人に特有の問題として、「この程度で先輩にチャットするのは申し訳ない」と迷っているうちに時間が過ぎてしまう「質問できない問題」がある。オフィスなら隣の席で気軽に確認できることも、リモートでは心理的ハードルが上がる。
また、オンとオフの境界が曖昧になることで際限なく働いてしまう危険もある。オフィスなら終業時間や周囲の様子が切り替えのきっかけになるが、在宅では自分で「終わり」を決めなければならない。
企業に確認すべきポイント:在宅勤務手当の有無、通信費・備品支援の有無、メンタルヘルス相談窓口の設置状況。在宅環境を整える支援があるかどうかが重要だ。
デメリット④ OJTと成長機会の減少
新入社員にとって最も大きなデメリットが、現場での学び(OJT)の機会が減ることだ。
オフィスに出社していれば、自分が直接関与しない場面——先輩の電話対応、上司の商談、クレーム対応——を横で見て吸収できる。こうした「暗黙知の共有」はリモート環境では起きにくい。日本能率協会マネジメントセンターの調査では、在宅勤務が多かった新人の14.9%が「担当業務の知識・手順がわからない」「萎縮して自分を出せない」「思ったような成果が出せない」を課題に挙げた(PR TIMES・日本能率協会マネジメントセンタープレスリリース)。
また、テレワーク環境では同期や他部署との横の繋がりが生まれにくい。社内ネットワークや先輩との偶発的な交流が減ることは、中長期のキャリア形成にも影響する。
会社への帰属意識も形成されにくい。前述の対面研修に戻した企業が1年目離職減少を実感したのは、この側面を示す一例だ。
企業に確認すべきポイント:「テレワーク下での新人育成の仕組みを教えてください」。オンラインOJTマニュアルの整備、バディ・メンター制度、定期的な出社日の設定など具体策を持つ企業かどうかを確認しよう。
デメリット⑤ メンタルヘルスへの影響
孤独感や評価不安が重なると、メンタルヘルスへの影響に発展するリスクがある。
厚労省のガイドライン(2021年改定版)では、テレワーク時の課題として長時間労働の防止とメンタルヘルスケアが明示されており、「労使双方が納得した形でテレワークを定着させることの重要性」が強調されている(厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施のガイドライン」)。
JILPT(労働政策研究・研修機構)は、「テレワーク適性が高い管理職ほど部下の孤独や不調に気付きにくくなりがち」と指摘している。「リモートがつらい」と言い出せない空気がある職場では、新人が静かに追い詰められるリスクがある(JILPT)。
企業に確認すべきポイント:「在宅勤務で困ったときの相談ルートは整備されていますか?」悩みを打ち明けられる窓口や、状況に応じて出社勤務に切り替えられる柔軟さがあるかを聞くことで、企業風土を測る材料になる。
若手社員のリアルな声:テレワークで感じたギャップ
調査データだけでなく、実際に経験した若手社員の声も参考にしてほしい。
「孤独で本当につらかった」
在宅勤務中心だった新入社員の中には、「まるで自分一人で働いているようだ」という声が多数ある。特に一人暮らしでは業務中にほぼ誰とも話さず1日が終わることもある。「人との何気ない会話がこんなに貴重だったとは思わなかった」と振り返る人もいる。
「聞きたいことが聞けない」
「この程度でチャットするのは気が引ける」「相手が今忙しいかもしれない」と悩み、問題を抱え込んでしまうケースがある。「何がわからないかもわからない状態になった」という声もある。
「フィードバックが怖い・少ない」
チャットやメールで受け取る指示・指摘は感情のニュアンスが読み取りにくく、必要以上に緊張するという声がある。「自分の仕事ぶりについて何も言われないと不安になる」という新人も多い。
「頑張りが伝わらない」
「今日こんな工夫をした」という小さな努力が上司に見えにくい状況が続くと、「自分の存在を忘れられているのでは」と不安になるケースがある。
「成長実感が持てない」
「先輩の仕事ぶりを見る機会がなく、自分が成長しているか分からなかった」「研修で教わったこと以外は自分から聞かないと何も教えてもらえない状況だった」という声がある。
もちろん「自分のペースで集中できて快適」「静かな環境でむしろ生産性が上がった」という新人もいる。テレワークの合う・合わないは個人差が大きい。自分がどちらのタイプか分からないまま就活するなら、入社後に選べる柔軟さがある企業を選ぶことがリスク回避になる。
テレワーク導入企業を選ぶときに確認すべき5つの質問
「テレワーク制度あり」という一言の中身は千差万別だ。説明会・OB訪問・面接で以下を確認しよう。
| 確認ポイント | 具体的な質問例 |
|---|---|
| 新人への適用条件 | 「新入社員もテレワーク可能ですか?適用される時期や条件を教えてください」 |
| 育成・OJTの仕組み | 「テレワーク下での新人育成はどのように行っていますか?」 |
| 評価・フィードバック体制 | 「在宅時の業務進捗管理や評価フィードバックはどのように実施していますか?」 |
| コミュニケーション設計 | 「在宅中に気軽に相談できる仕組みはありますか?(メンター制度、1on1など)」 |
| 柔軟な切り替えの可否 | 「テレワークが合わないと感じた場合、出社勤務に変えることはできますか?」 |
「テレワークか出社か」より「選べる柔軟さ」で企業を見る
本記事で見てきたように、テレワークは通勤ストレスの削減や時間の有効活用というメリットを持つ一方、新入社員には孤独感・評価不安・成長機会の減少・メンタルヘルスリスクなど特有の課題がある。
結論として、「テレワークか出社か」の二択よりも、状況に応じて選べるハイブリッド型の企業を評価軸に加えることをすすめる。「研修期間は出社、その後は週◯日在宅OK」「本人の希望や体調に応じて柔軟に変更できる」という環境なら、テレワークのメリットを享受しながらデメリットを補いやすい。
リクルートワークス研究所の分析(2025年1月)では、世界的にオフィス回帰(RTO)の流れが強まる一方、日本では「テレワーク経験者の満足度が2020年の57.0%から2022年には75.0%へ約18ポイント上昇している」として、単純な出社回帰ではなく「リモートと出社の最適バランスを模索する動き」が活発だと報告されている(リクルートワークス研究所)。社員の声に耳を傾けながらトライアルを重ねている企業は、新人に対しても柔軟に対応してくれる可能性が高い。
テレワーク制度の有無だけでなく、その中身と新人への適用条件を確認することが、ミスマッチを防ぐ最も確実な方法だ。
今すぐできる行動まとめ
- 志望企業の採用ページで「テレワーク・在宅勤務」の適用条件(特に新人向け)を確認する
- 説明会・OB訪問で上記5つの質問を活用する
- 「テレワーク制度あり」を高評価する前に、新人育成体制とのセットで評価する習慣をつける
- 自分がどちらのタイプ(在宅向き/出社向き)か分からなければ、入社後に選べる柔軟さを重視する
参考資料・出典
| 厚生労働省「労働経済白書」 | mhlw.go.jp |
| 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施のガイドライン」 | mhlw.go.jp |
| 労働政策研究・研修機構(JILPT)調査 | jsccs.jp |
| リクルートワークス研究所レポート | works-i.com |
| 学情「新入社員の勤務形態に関しての調査」(2024年) | prtimes.jp |
| 日本能率協会マネジメントセンター新入社員意識調査 | prtimes.jp |


