目次
- はじめに|リモートワークって、本当に理想の働き方?
- なぜ“新卒”にはリモートワークが難しいのか?
- “リモートで働ける人”って、どんな人?
- “リモートで働ける人”になるために、今なにをすべきか
- リモートじゃなくても、地方から世界とつながれる
- “地方就職”という選択が、あなたの人生を豊かにする理由
- “優良企業”の正体は、人によって違う
- “働き方”も“生き方”も、自分で選ぶ時代へ
はじめに|リモートワークって、本当に理想の働き方?
「できれば地元にいながら働きたい」
「満員電車に乗らずに、カフェや自宅で働けたらいいのに」
そんなふうに、リモートワークに魅力を感じる人も多いのではないでしょうか。SNSでは、おしゃれな部屋でパソコンに向かう“理想の働き方”のイメージが日々流れてきます。特にコロナ禍を経て、リモートワークが当たり前になったように見える今、「働く場所は自由であるべき」と考えるのは自然なことです。
でも、いざ就職活動を始めてみると、「新卒は基本出社です」と案内される企業ばかり。
「え?Zoomで面接したのに、働くのは出社なの?」と疑問に思った人もいるかもしれません。
実は、ここに働き方の“理想”と“現実”のギャップがあります。
そしてこのギャップは、あなたのせいでも、企業が古いからでもありません。新卒での入社には、それなりの理由があるのです。
企業にとって新卒採用は、「一緒に育っていく前提」の採用です。だからこそ、いきなりリモートで一人で働くよりも、先輩や上司の近くで少しずつ仕事を覚えていくことが重視されます。これは、企業が“管理したいから”ではなく、「一人前になるための近道」だと考えているからです。
また、リモートワークは“自由”な働き方である一方で、「自分で考え、動いて、結果を出せる人」でなければ成立しない働き方でもあります。だからこそ、すぐにリモートで働ける人はごく一部。むしろ多くの人は、出社して周囲とやり取りしながら、徐々にその力をつけていくのです。
このシリーズ記事では、リモートワークへの期待や誤解をひとつずつ解きほぐしながら、「働く場所」だけで就職先を選ばないための視点をお届けしていきます。
リモートにこだわらなくても、地元でも、地方でも、成長も自由も手に入る。
そんな未来を考えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです。
なぜ“新卒”にはリモートワークが難しいのか?
「リモート勤務って、社員の自由な働き方を大事にしてるってことじゃないの?」
「同じ会社でも、先輩は在宅OKなのに、自分は出社なのはなぜ?」
そんな疑問を抱いたことがある人もいるかもしれません。でも、それにはちゃんとした理由があります。
そもそも、企業が新卒を採用する目的は「即戦力」ではありません。
新卒は“これから育てる人材”という前提で採用されるため、最初から完全に一人で業務をこなせることは求められていません。むしろ、「これからどんなふうに伸びていくか」に期待されているのです。
では、その“育てる”というプロセスは、どんな環境で行われるのが最も効果的か。
答えはシンプルで、現場にいることです。
たとえば、ちょっとした業務のコツや、仕事の優先順位のつけ方、困ったときの対処法など、マニュアルに書いていない“リアルな仕事の勘どころ”は、先輩や上司のやり方を見て学ぶのが一番早い。顔を合わせながら会話できる環境は、実は新卒にとって最も恵まれた“学びの場”なのです。
また、何かあったときにすぐに質問できる、誰かが気づいて声をかけてくれる──こうした小さなやりとりが、安心して働ける土台になります。リモートだと、これらがすべて「自分から発信しないと伝わらない」状態になります。そうなると、不安や孤立感が大きくなってしまうことも。
さらに言えば、リモートワークが成立するには、「この人なら遠くにいても安心して任せられる」と思われる信頼関係が必要です。これは、何度も会話を重ね、実際のやり取りを通じて少しずつ築かれていくもの。最初のうちは、顔を合わせて働くことで、自然とその信頼が生まれていくのです。
もちろん、将来的にはリモートワークが選べる可能性はあります。でもその前に、仕事の土台をしっかり作っておくことが、結果として“自由な働き方”を選べる力につながっていくのです。
「リモートじゃないからダメ」ではなく、「今は育ててもらえる期間」だと前向きに捉えることが、キャリアの第一歩として大切なのかもしれません。
“リモートで働ける人”って、どんな人?
最近よく見かける、「地元にいながら東京の企業でリモート勤務」「海のそばでノマドワーク」といった自由な働き方。憧れますよね。でも、それを実際に実現している人たちは、ただラッキーなわけではありません。
じつは、“リモートで働ける人”には、共通する特徴があります。
それはひと言でいえば、**「放っておいても、ちゃんと仕事を進められる人」**です。
たとえば、こんな人を思い浮かべてみてください。
- 誰かに言われなくても、やるべきことに気づいて動いている
- 任されたことは、ちゃんと最後まで責任を持ってやり遂げている
- わからないことがあったら、早めに聞いたり、自分で調べて解決しようとする
- 進捗や状況をこまめに報告して、まわりから「安心して任せられる」と思われている
こうした人たちは、職場にいなくても「この人なら大丈夫」と信頼される存在です。だからこそ、「リモートでもOK」と言われるのです。
逆に、「言われないと動けない」「納期ギリギリまで放置する」「進捗を報告しない」…そんな状態だと、どんなにリモートワークを望んでも、企業としては不安になります。
つまり、場所に関係なく働くには、「結果を出せる力」と「安心して任せてもらえる力」が必要なんです。
ただし、これは「天性の才能がある人だけができる」という話ではありません。こうした力は、職場での経験や失敗の中で、少しずつ身についていくものです。だからこそ、最初のうちは出社して仕事を覚えたり、まわりの人とやり取りしながら自分の“仕事スタイル”を作っていくことが大事なんです。
よく「自由に働きたいから、早くリモートで働けるようになりたい」と言う人がいます。でも、実はその逆で、**“地道に力をつけていくことで、あとから自由が手に入る”**という順番なのです。
リモートワークはゴールではなく、「実力がある人に与えられる選択肢のひとつ」。
まずはその“選ばれる側”になる準備から始めていきましょう。
“リモートで働ける人”になるために、今なにをすべきか
「将来は地元でリモート勤務したい」
「東京の会社で働きながら、暮らしは地方でしたい」
そんな未来を描いている人にとって、気になるのは「じゃあ、自分は今なにをしておけばいいのか?」ということだと思います。
結論から言うと、リモートで働ける力は、最初から持っている必要はありません。だけど、それを目指すなら、まずは**「出社して学ぶ期間」こそが、土台を作る近道**だということを知っておいてほしいんです。
たとえば、次のような力は、リモートで活躍する人に共通するスキルですが──
- ● 何を優先すべきかを自分で考えて、動ける力
- ● 人に頼らなくても、ある程度のことを自分で調べて解決できる力
- ● 状況や進捗をまわりにわかりやすく伝えられる力
これらは、学校の授業ではなかなか身につきません。実際の仕事の現場で、ちょっとずつ覚えていくものなんです。
出社して働くことで得られるのは、ただ仕事のやり方を覚えるだけではありません。
職場には、「困ってる後輩を自然にフォローしてくれる先輩」「言葉に出さなくても空気を読んで動ける人」「周囲と相談しながらチームで成果を出す空気感」があります。
こうした“仕事の空気”を感じることが、社会人としての基礎力を育ててくれます。
また、出社していると、「ちょっとした雑談から気づきを得る」「うまくいかないときにすぐ相談できる」といった、リモートでは得にくい学びのチャンスがたくさんあります。それが、のちのち一人で仕事を任されるときに、確実に役立ちます。
「いつか自由に働きたい」「好きな場所で暮らしながら、ちゃんと稼ぎたい」
その気持ちは、目指す価値のあるものです。でも、だからこそ焦らず、まずは“土台づくり”に全力を注ぐことが、将来の選択肢を広げる一番の近道です。
最初からリモートで働ける必要はありません。
「この人なら安心」と思ってもらえる自分になること──それが、未来の働き方を自由に選べる人への第一歩です。
リモートじゃなくても、地方から世界とつながれる
「東京や海外に行かないと、スケールの大きな仕事はできない」
「地元で働いたら、キャリアの幅が狭くなるんじゃないか」
そんな不安を感じている人は、少なくないかもしれません。でも、実際には地方にいながら、全国、そして世界とつながる仕事をしている人たちはたくさんいます。
たとえば、地方に本社や拠点を置きながら、全国の企業と取引しているIT企業や製造業は数多くあります。中には、海外のクライアント向けにサービスを提供している地方企業もあります。
さらに、最近では地域発のスタートアップや、最先端技術を扱うベンチャー企業が地方に登場しはじめていて、「地方=ローカルな仕事だけ」という常識は、もはや過去のものになりつつあります。
また、地方で働く魅力は「仕事の大きさ」だけではありません。
都市部の大企業では、業務が細分化されていて、若手のうちは“全体像が見えない”まま働くこともありますが、地方企業では少人数だからこそ、入社後すぐに幅広い仕事を経験できるケースが多いのです。
提案書の作成からクライアント対応、場合によっては商品開発にまで関わる──そんな機会も、地方では比較的早く巡ってきます。
これは裏を返せば、「成長のスピード」が速くなる可能性があるということ。
小さな組織で責任を持って仕事を任される経験は、自信と実力につながり、それはやがて“どこでも通用する力”になります。
さらに今の時代、オンラインミーティングやクラウドツールが当たり前になったことで、「どこにいるか」より「どんな価値を生み出せるか」の方が重要視される時代に変わりつつあります。
地元で働きながら全国のクライアントとやり取りをする。チームメンバーは首都圏にいても、連携はスムーズ──そんな働き方が、現実にできるようになっています。
だからこそ、「地元に就職する=キャリアをあきらめる」という発想ではなく、“地方にいながらどう成長するか”という視点を持つことが大切なのです。
働く場所に縛られない時代だからこそ、可能性はどこにでもあります。
大事なのは、「ここで働いたら、自分はどんなふうに変われるか」を見つめること。
その視点を持てば、地方就職という選択肢も、あなたのキャリアを切り拓く武器になるはずです。
“地方就職”という選択が、あなたの人生を豊かにする理由
「都会に出ないと、人生損するんじゃないか」
「せっかくの新卒なのに、地方に就職するのはもったいない?」
こんなふうに感じている人は、決して少なくないと思います。たしかに、東京や大阪のような都市部には、大手企業が集まり、チャンスも多く見えるかもしれません。でも、“長く、豊かに働く”という視点で見ると、地方で働くという選択には、意外とたくさんのメリットがあるんです。
まず、生活コストが圧倒的に低いという現実があります。
たとえば、都内で1人暮らしをすれば、家賃だけで月8〜10万円というのも珍しくありません。でも、地方ではその半額以下で広い部屋に住めることも。食費や交通費も抑えられる分、同じ給料でも「自由に使えるお金」が圧倒的に多くなるのです。
さらに、地方では通勤時間が短く、暮らしに“余白”があることも大きな魅力です。
満員電車で1時間かけて出勤するのではなく、車や自転車で15分。朝にコーヒーを飲む余裕や、仕事終わりに夕焼けを見ながら帰れる生活は、思った以上に心を整えてくれます。
そして何より大きいのは、人とのつながりの濃さです。
地方では、職場の仲間だけでなく、地域の人との距離も近く、日々の暮らしのなかで自然と人間関係が生まれていきます。「知り合いに相談できる」「困ったら助け合える」という環境は、働く上でも、人生を支える安心感になります。
加えて、地方企業では若手でも早い段階で“任される経験”ができるというのも大きなメリット。組織がコンパクトだからこそ、裁量を持ってチャレンジするチャンスも多く、都会の大手企業よりも“成長スピード”が速くなることもあります。
もちろん、地方にも課題や不便さはあります。でも、それ以上に**「自分らしく、長く働ける環境」がある**ことは、人生をデザインするうえで大きな価値になります。
就活は「どこに行けば得か?」だけでなく、「どこにいると、穏やかで前向きな自分でいられるか?」という視点で考えることも大切です。
地方就職という選択肢は、ただの“妥協”ではなく、あなたの人生を豊かにする“戦略”にもなり得るのです。
“優良企業”の正体は、人によって違う
「どうせ働くなら、優良企業に入りたい」
就職活動を始めると、誰もが一度はそう思います。でも、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいんです。
そもそも、“優良企業”って、誰にとっての優良企業?
たしかに、企業の売上、上場しているか、福利厚生が整っているか、そういった“わかりやすい数字”で比較することは簡単です。ネットにも「ホワイト企業ランキング」や「就職人気企業ランキング」があふれています。でも、そのランキングに載っている企業が、あなたにとっての“理想の職場”かどうかは、まったく別の話です。
たとえば、「どんなに忙しくても成長できる環境がいい」と思う人にとっては、ベンチャー企業が合っているかもしれません。でも「自分のペースで働ける場所がいい」と思う人には、安定志向の地元企業の方がフィットするかもしれません。
「誰かの正解」は、「あなたの正解」とは限らない。
だからこそ大切なのは、自分にとっての“優良”の基準をつくることです。
そのヒントになるのが、こんな問いかけです:
- どんなときに「やりがい」を感じる?
- 仕事でストレスを感じるのは、どんなとき?
- どんな働き方なら、無理せず自分らしく続けられそう?
- 将来、どんな自分になっていたい?
こうした問いに、自分なりの答えを出していくことで、企業を見る目がガラッと変わります。
たとえば「教育制度がしっかりしているか」や「上司と気軽に話せる雰囲気か」といった部分は、パンフレットだけではわかりません。でも、インターンやOB訪問で社員と話すと、「ここなら自然体で働けそう」「この人たちとなら、頑張れそう」と感じられるかもしれません。
“企業を見る”というより、“自分に合う場所を探す”という感覚。
これが、就職活動を「苦しい選抜の場」から「自分の未来を選ぶ時間」へと変えてくれます。
「ネームバリューがあるから」「みんなが知ってるから」ではなく、
「この会社なら、自分の価値観に合っている」と思える選択が、結果的に“自分にとっての優良企業”になるのです。
“働き方”も“生き方”も、自分で選ぶ時代へ
これまでの時代は、「どんな会社に入るか」が人生のすべてを決めるように語られてきました。
「安定した会社に入れば安心」「有名企業に行けたら勝ち」──そんな価値観が当たり前のようにありました。
でも今は、働き方も、キャリアの築き方も、人生のあり方も、多様で正解がありません。
そしてなにより、それを自分で選び、自分でつくっていける時代になっています。
たとえば、都会に出なくても、地方でグローバルな仕事をしている人がいます。
毎日出社しなくても、信頼されてリモートで働いている人がいます。
収入よりも、人とのつながりや暮らしやすさを大事にして、地元で長く働いている人もいます。
共通しているのは、「自分がどう生きたいか」をちゃんと考えて選んでいるということ。
それが、これからの時代の“就職活動”に求められている姿勢なのだと思います。
就活は、「企業に選ばれる場」ではなく、「自分が生き方を選ぶ場」。
この考え方を持てるかどうかで、将来の働き方や暮らしの満足度は大きく変わってきます。
もちろん、最初から完璧な答えが見つかるわけではありません。
だからこそ、たくさん調べて、たくさん悩んで、「自分なりの軸」を見つけていくプロセスが大切です。
働く場所、暮らす場所、やりたいこと、大切にしたい価値観。
全部を一度で決める必要はありません。でも、“自分の人生を自分で決める意識”は、今このタイミングから持つことができるのです。
自由な働き方を目指すなら、まずは自由を選べる実力を育てる。
理想の生き方を実現したいなら、そこに向かう小さな選択を丁寧に積み重ねていく。
そんなふうに、自分の人生に「納得」できる選択を一つずつしていくことが、
これからの“就職活動”を、本当の意味で価値あるものにしてくれるはずです。